手もとにある『唱えればかなう真言事典』(中野展子・著)によれば、真言とは神秘的な力をもつ言葉、つまり「呪文」。
密教系の寺院でご祈祷などを受ければ不動明王の真言(主に「慈救咒」)が出てきたり、ご供養などでは大日如来の光明真言が唱えられたり、多くのかたがどこかで耳にしたことがあるのではないだろうか。
じつは大吉は真言=呪文好き。(*^_^*)
そしてただ好きなだけでなく、実際にその力にすくわれ、驚いたこともある。
去年のこと。
千葉の海の近くにある、とあるお寺に参拝に出向いた私は、開いたお堂の扉越しに、そこにおわす仏さま(仏像)に気づいた。
とても珍しい仏像だった。
私は大の仏像ファン(と言うより「ご神仏が好き」なのだが)。
お堂を撮るふりをしてスマホのカメラを望遠にし、お堂の中の仏さまをパチリとやった。
やった、と昂揚した。
だが、撮った写真を確認すると、なんだか気持ちが悪い。
カメラに収まった仏さまは、妙な不気味さを感じさせた。
撮ってしまったことを後悔した。
――その夜遅く。
私はとつぜん、猛烈な腹痛に襲われた。
そんなことは珍しく、いきなりの痛みにどうしてよいか分からずとまどったが、とにかく痛い。
眠れない。
まんじりともできない。
これはたいへんなことになったと思ったとき、プライベートで仲よくさせていただいている、ある霊能者さんの言葉がよみがえった。
「体調がすぐれないときは、オンアビラウンケンソワカ と唱えるといいですよ。わたしはそれで治りました」
オンアビラウンケンソワカ――胎蔵界大日如来の真言。
その話を聞いたときは「そうなの? すごいな、真言…」と思ったが、まさか自分が、わらにもすがる思いでその真偽を試さざるを得ないときがこようとは思わなかった。
お腹に手を当て、必死に唱えた。
オンアビラウンケンソワカ。
なんべんも、なんべんも。
オンアビラウンケンソワカ。
オンアビラウンケンソワカ。
やがて、いつしか私は深い眠りに落ちていた。
ようやく痛みが去ったから、だったろう。
ハッと気がつくと、窓越しに朝の光が射しこむ時間になっていた。
「ほんまかいな!?」
そう言われることは分かっている。
だが、本当にそうだったのだからしかたがない。
あの夜の私の腹痛は、この真言を唱えたことでまちがいなく癒えた。
嘘のような本当の話。
だが、私にこの真言のパワーを教えてくれた、くだんの霊能者さんはこうも言った――。
「あっ、ただしこの真言が効くのは、腹痛の原因が先生に何か悪いものが『憑いてしまった』場合にかぎりますよ。変なものが取り憑いたんであれば効果はあります。でも他の理由によるものなら、どうかわからないですね」
……ふはっ(「イチケイのカラス」の入間みちお調に。笑)。
つまりあの日の私は、変なものを「憑けて」帰ってきてしまったということか。
翌日、この一件について話すと、その霊能者さんはすぐに言った。
「その写真、すぐ削除してください。悪いことは言わないから」
私がすぐにそうしたことは、言うまでもない。
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